Project Story
プロジェクトストーリー
Aerial 販売の戦略 ピッチに立つ、男たちのあくなき挑戦

営業最前線での闘い

2012年春、人気タレントが出演する「エアリアル」のCMがお茶の間に流れ、リニューアルした商品が全国の店頭に並んだ。再スタートの出だしは好調だった。しかしその頃、このニュースを「一時的なものではないか」と考えている男がいた。東京西営業所から本社の営業部販売企画課へ異動した久保木信好である。久保木は営業のエースとしての実績を買われ、販売企画課に移って一年が経とうとしていた。やはり、「エアリアル」の行方を気にしていた一人である久保木の胸中には、何か引っ掛かるものがあった。CM放映とリニューアルが功を奏し売り上げは伸びたが、いつか落ちるのではないか。長い現場経験の中で、そういった商品をいくつか見てきていたからだ。
販売企画課とは、商品の特徴や売り上げの分析、市場の背景、販売方法などの情報を、全国の営業スタッフに向けて発信する部署だ。久保木は「エアリアル」のリニューアルに際しても、従来通りにこれらトピックをまとめた指示書を送っていた。だが、長らく慣れ親しんだ現場からは、響いて返ってくるものが少ない。「初速の勢いはあるのに、それを持続できない何かがあるのではないか」。
久保木は立ち止まり、もう一度何が足りないかを考えた。そして気付いた。営業現場の人間が、「エアリアル」を売りたいと感じていない。足りないもの、失ったものも、自分自身にあった。それは、「営業の目線」だった。営業を熟知しているはずの自分が、いつの間にか他の何より嫌っていた「現場を知らない人間」になっていたことに気付いたのだった。

「営業現場の気持ちになれるというのは、自分の唯一のストロングポイントのはず」。もし、自分が営業現場にいて、このような指示書を本社から投げられたらどう思うか。改めて自分が送った指示書を見直した。するとそれが、単なる独りよがりの押しつけに見えた。そこで久保木は、営業目線に戻ることから始めた。
今、自分が営業の立場ならまず何をするか。きっと得意先である卸業者に「エアリアル」の魅力を理解してもらうことから始めるだろう。そこで考えたのは、そうした魅力を伝えて成功している営業所の取り組みを、成功例として伝えようということだった。そして、全営業所の売り上げの数字を詳細に分析した。小さなことながら、本来の基本に立ち返るためには必要な作業だった。

この時、久保木は営業所時代のひとつの経験に思い当たった。自分が本当に売りたいという思い入れがある商品は、営業に行く際、商談に関係なくともサンプル品を常に鞄に忍ばせ試食してもらっていたではないか。「一度、食べてもらえれば、このおいしさは伝わる」。その一念で、相手に商品を印象づける作戦だった。
その経験と営業所からの声をもとに、久保木が商品開発課と討議を重ね、導き出した答えは、ヤマザキビスケットでは初めての「消費者へのサンプル品配布キャンペーン」というアイデアだった。
「販売の現場を知るものとして言えることは、営業スタッフみんなが自然に『売ろう』と思ってもらわなければ、商品は店頭には並ばないということ。データはそれを後押しするだけなんです。そのためには一人ひとりにまず消費者の声を聞かせよう、自分たちは本当においしいものを売っているんだという実感を持ってもらおうと考えました」。
久保木はサンプル配布のキャンペーンにあたって、ひとつの条件を出している。「必ず、営業スタッフ自身が店頭に立つこと」。そして社としては初であろう3万6千パックを、全国の営業スタッフがお客様一人ひとりに手渡しをしたのである。最前線の営業現場からは、「みんなが喜んでくれた」「おいしいという笑顔が嬉しかった」という反響の声が続々と返ってきた。中には手製の「エアリアル」エプロン姿で店頭に立った者もいた。それは、現場の営業担当者が本気で「エアリアルを売ってやろう」と思っている証だった。

ブランドマネージャー発足。
さらにピッチを走りつづける

現在、「エアリアル」は発売当時から4倍の売り上げを見せている。2012年秋には商品開発課にブランドマネージャー制度が導入された。ブランドを作り上げるところから売り込むまでの一連の流れを、常に把握する役目。さながら、ピッチ全体ににらみをきかせているキャプテンだ。
そして2013年夏、臼田が開発研究室から商品開発課に異動し、ブランドマネージャーのポジションが託された。「エアリアル」を前に臼田の心にいつも浮かぶのは、世話になった開発研究室の先輩、そして家族ともいえる仲間たちの姿だ。背負う期待とプレッシャーは、大きい。臼田からは「この商品を伸ばしていかないと、製造現場の人たち、開発研究室の人たちにも面目が立ちませんよね」という言葉が出た。しかしその姿に、ためらいや気弱な様子はない。販売企画課の久保木は、頻繁に臼田の元を訪ねては前線の戦況を伝えている。同様に須藤も、自身の後任の様子を常時気にかけている。「周りの支えがあるので大丈夫です。それに『エアリアル』は、社内のみんなに心から愛されていますからね」。

「こんなに伸びているブランドはない」。ヤマザキビスケットの誰もがそう口にする。それは同時に、敗北は許されない闘いであることを意味する。だが「エアリアル」の成功こそ、今後の指標となるであろう。ただ一つのゴールを目指し、男たちは今日もピッチを走り続けている。

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